リハビリの現場から感じる課題
臨床で患者さんの筋や骨、靱帯を正確に触り分けることは、リハビリの質を左右します。
しかし、
「触診に自信がない」
「構造のイメージは頭にあるけど、指先で実感できない」
という声は、理学療法士・作業療法士のあいだで今も多く聞かれます。
そんな悩みに応えるように登場したのが、『1日3分自触習慣!触診ドリル 下肢・体幹編』です
タイトル通り、1日3分、自分の体を“教材”にして触診技術を磨くというまったく新しいアプローチ。
触診を「暗記」ではなく「体得」に変える、理学療法士必携の一冊です。
書籍の基本情報
書名:1日3分自触習慣!触診ドリル 下肢・体幹編
著者:浅野 昭裕(中部学院大学 看護リハビリテーション学部 理学療法学科 教授)
編者:園部 俊晴
出版社:運動と医学の出版社
発行日:2024年1月22日
定価:税込 5,280円(本体4,800円)
ISBN:978-4904862629
判型・頁数:B5変型/244頁
電子版:あり(2025年2月より配信)
シリーズ:上肢・頚部編も同時展開
書籍の概要と特徴
本書は、「触診を教科書で覚えるのではなく、自分の体を教材として実感しながら学ぶ」ことを目的とした実践型ドリルです。
臨床家自身が“触れられる側”になることで、組織の層構造や触感の違いを体で理解し、確かな手技感覚を育てます。
特徴的なのは、わずか1日3分から取り組める構成。忙しい臨床家でも継続できるよう、
- 短時間で完結するステップ形式
- 目的ごとの自触課題(例:骨指標の確認、筋の走行感覚の再現)
- 臨床での触診精度を高めるポイント解説
が整理されています。
また、園部俊晴氏監修のもと、「臨床の思考と手の感覚をつなぐ」テーマが全体を貫いており、単なる解剖書ではなく、“臨床で使える触診トレーニング本”として完成されています。
目次と各章の内容
第1章 触診力を高めるための基本原理
触診における「見る」「触る」「感じ取る」3段階のプロセスを解説。
単なる位置確認ではなく、目的に応じた触診の意味づけを行う重要性を説きます。
第2章 骨格構造とランドマークの自触練習
骨の形状・位置関係を自分の体で触ることで、解剖学的な基準点を明確にします。
腸骨稜、大転子、膝蓋骨など臨床で頻出するランドマークを、写真とイラストで丁寧に解説。
第3章 下肢の筋群に対する自触ドリル
大腿四頭筋、ハムストリングス、腸腰筋など主要筋群を自触で確認し、深層と浅層の違い、走行と触感の特徴を体で理解します。
「触れない筋をどうイメージするか」という視点も提示されています。
第4章 体幹部の触診と安定化筋の理解
体幹の触診を通じて、姿勢保持や動作制御に関わる深層筋の感覚を磨きます。
腹横筋・多裂筋・腰方形筋など、臨床で評価が難しい部位へのアプローチ法を丁寧に紹介。
第5章 触診精度を高める反復ドリルと臨床応用
触診技術をルーチン化するための3分ドリルを多数掲載。
各ドリルには「よくある失敗例」と「正しい触診のコツ」が示されており、自己学習でも確実に上達が見込めます。
読んで得られること
- 構造を“立体的に”理解する力が身につく
- 自分の体を教材にできるため、いつでも練習可能
- 臨床での触診精度・再現性が高まる
- 患者に触れる際の“安心感”や“説得力”が増す
とくに若手セラピストにとっては、「手が迷う」状態から「確信をもって触れる」状態への変化を実感できる内容です。
どんな人におすすめか
- 触診技術を改めて鍛え直したい理学療法士・作業療法士
- 解剖学を学び直したい学生・新人セラピスト
- 筋骨格の理解をより深めたいトレーナー・ボディワーカー
- 短時間で学習習慣を定着させたい臨床家
忙しい日々の中でも継続できる“3分習慣”というコンセプトが、すべての医療職にとって実用的です。
実際に読んだ感想・臨床での活かし方
本書の良さは、ただ「触診を学ぶ」のではなく、「触診を通して自分の身体理解を深める」という発想にあります。
私自身も読後に、臨床中の手の置き方や筋の追い方が変化しました。
特に、患者の大腿筋膜張筋や中殿筋を触診する際、以前よりも「深さ」や「方向」のイメージが明確になった感覚があります。
また、学生教育の場面でも、教科書で伝わりにくい“指先の感覚”を共有する教材として非常に有用でした。
触診実技の練習前に自触ドリルを取り入れるだけで、学生の触診成功率が上がる印象です。
まとめ
『1日3分自触習慣!触診ドリル 下肢・体幹編』は、忙しい臨床家でも「確実に手技を磨ける」現実的な触診トレーニング本です。
触診を理論から実感へと変えるための最適なガイドとして、すべてのリハビリ職におすすめできる一冊です。

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