リハビリの現場から感じる課題
循環器疾患に対するリハビリテーションが広まってきました。
脳卒中後や整形外科術後など、合併症として心疾患を抱えている患者さんも増えています。
その中で、心疾患を一様に捉えてしまい、リスク管理が不十分なまま介入してしまうケースを見かけることがあります。
しかし実際には、心不全、虚血性心疾患、不整脈、弁膜症など、それぞれで症状の出方もリスクも大きく異なります。
「病気がみえる vol.2 循環器」は、こうしたリハビリ職が抱える“循環器の苦手意識”を解消し、理解に深みをもたらしてくれる一冊です。
書籍の基本情報
書名:病気がみえる vol.2 循環器(第5版)
編著:医療情報科学研究所
出版社:メディックメディア
発行年:2021年3月(第5版)
判型/頁数:B5判/432頁
定価:3,960円(税込)
ISBN:978-4-89632-830-1
電子版:アプリ版・PDF版(iOS限定)あり
シリーズ名:病気がみえる(みえるシリーズ)
書籍の概要と特徴
本書は循環器領域を、解剖・生理・病態・検査・治療まで一気通貫で理解できる構成になっています。
図表が圧倒的にわかりやすく、特に「心臓の働き」「血行動態」「疾患の仕組み」など、理学療法士・作業療法士が苦手としがちな領域を視覚的に理解できる点が最大の強みです。
さらに、治療薬の作用機序や検査値の意味まで整理されており、循環器内科チームとのカンファレンスでも即役立つ知識が身に付きます。
リスク管理や、運動処方の根拠となる考え方にも踏み込んで解説されているため、循環器を専門にしていなくても臨床で自信を持てる内容です。
目次と各章の内容
【循環器の解剖・生理】
心臓の構造、刺激伝導系、冠動脈の走行、血行動態などの基礎から整理されており、「なぜその症状が起きるのか」が明確になります。
特に心拍出量や前負荷・後負荷の概念は、リハ中のバイタル変動の理解に直結します。
【循環器の検査】
心電図・心エコー・胸部X線・採血(BNPやトロポニン)など、臨床でよく見る検査の読み方がイラスト中心で解説されています。
「何を見て、どう判断するか」が整理されているため、循環器医の説明が理解しやすくなる章です。
【心不全】
急性・慢性の違い、NYHA分類、病態進行のステージングなど、心不全リハビリで必須の知識が網羅されています。
特に「なぜ息切れが起きるのか」「うっ血のメカニズム」が図で理解でき、運動強度設定や観察ポイントに直結します。
【虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)】
冠動脈の狭窄から症状出現までの流れ、心筋虚血の段階的変化など、リスク管理に不可欠な情報が整理されています。
“胸痛の種類”の比較は非常に実践的で、現場での観察に役立つ章です。
【不整脈】
洞不全症候群、心房細動、心室性不整脈まで幅広く収録。心電図パターンの特徴が視覚的に示されているため、「危険な不整脈の見極め」が一気に理解できます。
【弁膜症】
どの弁がどのように働きを失うと血行動態がどう変化するのか、負荷や症状との関連性が丁寧に説明されています。
リハ中のめまい・動悸の背景理解に役立つ章です。
【血管疾患・ショック】
大動脈解離や肺塞栓症など、緊急性の高い疾患の兆候を把握できます。
突然のバイタル変化の裏で起こり得る病態が理解でき、現場での対応力向上につながります。
読んで得られること
本書を読むことで、循環器の複雑な病態を統合的に理解でき、リハビリ中の観察力・判断力が飛躍的に向上します。
特にバイタル管理や運動強度調整の根拠が明確になり、チーム内での説明や共有の質が高まります。
また、エビデンスに基づく図解が豊富なため、後輩指導や勉強会資料の作成にも役立ちます。
どんな人におすすめか
- 循環器疾患のリハビリに自信がないセラピスト
- 心不全患者の鑑別や運動負荷の考え方を整理したい方
- 学生や新人スタッフの教育に使える資料を探している方
- チーム医療の中で循環器の知識を強化したい方
特に「なんとなくバイタルを見ている状態」から脱却したい方には最適の一冊です。
実際に読んだ感想・臨床での活かし方
図が圧倒的に見やすく、複雑な病態が一気に腑に落ちる構成です。
心不全の急性増悪時の症状の流れや、虚血の段階的変化などは特に臨床での理解が深まり、リスク管理が確実に変わります。
リハビリ中の軽度の息切れや動悸など、「ただの疲労か、病態の兆候か」を判断する際にも役立ち、患者さんの安全に直結する知識を得られました。
教育場面では、章ごとに要点をまとめた図が使いやすく、循環器の日常的な疑問への“即答ツール”として活躍しています。
まとめ
「病気がみえる vol.2 循環器」は、循環器に苦手意識を持つリハビリ専門職にとって、最も実践的で頼れる一冊です。
病態の理解がそのまま臨床力に直結し、より安全で根拠あるリハビリテーションが提供できるようになります。
“循環器を自信を持って語れるセラピスト”を目指す方には必読の内容です。

コメント