この本を手に取った理由
糖尿病が既往歴にある患者さんが増えています。
服薬を継続している方、インスリン注射を管理している方、さらには未治療で低血糖症状が起こりやすい方までリハビリの現場にはさまざまです。
リハビリ・運動療法・日常生活指導を行う上で、血糖変動や代謝異常へのリスク管理は欠かせません。
しかし「もう少し体系的に理解できれば…」と感じる場面も多いのではないでしょうか。
そんな臨床家が知りたいポイントを、視覚的に・構造的に・現場で使えるレベルまで落とし込んでくれるのが『病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌』です。
書籍の基本情報
書名:病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌
編著者:医療情報科学研究所
出版社:メディックメディア
発行日:2019年10月4日(第5版)
定価:3,740円(税込)
判型・頁数:B5判 / 352頁
ISBN:978-4-89632-766-3
シリーズ名:病気がみえる シリーズ
電子版情報:mediLinkアプリにてPDF版(iOS向け)あり
書籍の概要と特徴
本書は、糖尿病・脂質異常症・甲状腺疾患・副腎疾患など、リハビリ専門職が日常的に関わる内分泌・代謝疾患を、図解ベースでわかりやすく整理した一冊です。
病態生理・診断基準・治療・薬物の作用機序まで視覚的に理解できるため、臨床のリスク管理や目標設定に直結します。
特に血糖管理に関するページは、低血糖・高血糖のメカニズムや症状、運動との関係を丁寧に解説しており、リハビリ中の安全管理に必要な情報が端的にまとまっています。
目次と各章の内容
糖尿病
インスリンの働き、血糖値が上がる理由、2型糖尿病の発症メカニズム、治療薬の違いが図で整理されています。
リハビリ中の「低血糖の兆候」や「高血糖状態で運動を控える理由」など、臨床に直結するポイントも読み取りやすい構成です。
脂質異常症
LDL・HDL・中性脂肪の役割と、動脈硬化への影響が理解しやすくまとめられ、心血管リスクの高い患者への運動強度設定に役立ちます。
甲状腺疾患
甲状腺ホルモンの過不足による症状の違いが明確に示され、倦怠感・頻脈・筋力低下など、リハビリで見落としたくない所見を把握できます。
副腎疾患
クッシング症候群・アジソン病などの病態をシンプルに理解でき、ステロイド治療中の患者の筋量変化や骨粗鬆症リスクなどを考える手がかりとなります。
読んで得られること
- 糖尿病患者の運動療法に必要な血糖管理の基礎を理解できる
- リスク管理の判断根拠(低血糖・高血糖・合併症への配慮)が明確になる
- 代謝疾患に伴う症状の「なぜ?」を説明できるようになる
- 薬物治療の影響を踏まえた運動計画が立てられる
- 他職種(医師・看護師・薬剤師)と共通の言語で話せるようになる
リハビリ職にとって「曖昧にしていた部分がスッと腑に落ちる」内容が随所にあります。
どんな人におすすめか
- 糖尿病や代謝疾患の患者を担当するPT・OT
- 運動療法の安全管理に自信をつけたい新人療法士
- 内分泌領域の基礎をまとめて学びたい中堅療法士
- 学生指導で病態を視覚的に説明したい指導者
- 合併症の多い高齢者のリハビリに携わる方
特に「根拠はなんとなく分かるけど説明が曖昧」という人には即効性があります。
実際に読んだ感想・臨床での活かし方
本書の魅力は、難しい代謝の話が“図を見るだけで理解できる”形に整理されている点です。
例えば糖尿病では、運動がどのようにインスリン感受性を上げるのか、低血糖が起こるリスクはどこにあるのか、治療薬によって注意点がどう変わるのかまで一目で把握できます。
臨床では、運動開始前の血糖値チェックや症状観察、患者教育の際に「なぜその対応が必要なのか」を分かりやすく説明できるようになりました。
患者の理解が深まり、生活指導にも説得力が生まれます。また、チーム医療の場で医師や看護師との会話がスムーズになり、必要な情報をより確実に共有できるようになった点も大きな収穫です。
まとめ
『病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌』は、臨床で頻繁に遭遇する代謝・内分泌疾患を“理解して使える知識”に変えてくれる実践的な一冊です。
糖尿病患者が増える現場で、安全で効果的なリハビリを提供するための必読書と言えます。
ビジュアルと解説のバランスが優れており、専門書としてだけでなく、臨床の相棒として長く活躍してくれます。

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