超音波は「評価の道具」から「治療を導く目」へ
リハビリの現場で超音波画像を活用することは、もはや一部の専門家だけの技術ではなくなりつつあります。
評価の客観性を高め、患者への説明力を向上させ、治療の再現性を担保する。
その中心にあるのが「理学療法における超音波」です。
シリーズとして継続刊行されてきた『理学療法超音波学』は、まさにその流れを牽引してきました。
本記事では最新刊であるvol.3を軸に、vol.1・vol.2との比較を交えながら、本書の臨床的価値を掘り下げていきます。
書籍の基本情報
書名:理学療法超音波学 vol.3
監修:日本運動器理学療法超音波フォーラム
編集代表:福井 勉
編集:浅野 昭裕、小柳 磨毅、谷口 圭吾、林 典雄、村木 孝行
出版社:運動と医学の出版社
発行年:2025年
判型:B5変型
ページ数:192ページ
定価:6,490円(税込)
ISBN:978-4904862773
シリーズ名:理学療法超音波学
電子版:あり(医書.jp等)
書籍の概要と特徴
理学療法超音波学 vol.3 は、シリーズの中でも「臨床応用」に強くフォーカスした一冊です。
vol.1が超音波画像の基礎理解、vol.2が部位別・疾患別の評価を体系化した内容であったのに対し、vol.3では「視えた情報をどう治療に結びつけるか」が中心テーマとして据えられています。
単なる画像の読み取りにとどまらず、動作分析や治療戦略の立案、再評価までを一連の流れとして捉える構成が特徴で、超音波を“評価ツール”から“治療を変える目”へと昇華させる意図が明確に感じられます。
目次と各章の内容
本書では、運動器理学療法の主要領域を横断しながら、超音波を臨床推論にどう組み込むかが解説されています。
序盤では、超音波画像を臨床で扱う際の思考プロセスが整理され、単なる解剖確認ではなく、機能的評価としての超音波の位置づけが示されます。
ここはvol.1・2にはなかった、vol.3ならではの特徴です。
中盤以降では、肩関節、膝関節、足関節、体幹など、日常臨床で遭遇頻度の高い部位を中心に、画像所見と動作・症状を結びつける視点が提示されます。
章タイトルはあくまで自然な流れの中で示され、各章で
「なぜその所見が重要なのか」
「それが治療選択にどう影響するのか」
が一貫して解説されている点が印象的です。
終盤では、超音波を用いた評価をどのように患者説明や多職種連携に活かすかといった、より実践的なテーマにも踏み込んでおり、理学療法士としての臨床力全体を底上げする内容となっています。
読んで得られること
本書を読むことで、超音波画像を「撮れる」「見える」だけの段階から、「考えられる」「使いこなせる」段階へと進むためのヒントが得られます。
vol.1で基礎を学び、vol.2で評価の幅を広げた読者にとって、vol.3はそれらを統合し、実際の治療に落とし込むための橋渡しとなる一冊です。
超音波を根拠として臨床判断を行うための思考の型が身につく点は、大きな収穫と言えるでしょう。
どんな人におすすめか
理学療法超音波学 vol.3 は、すでに超音波を臨床で使用している、あるいは使用し始めた理学療法士・作業療法士に特におすすめです。
超音波初心者の場合は、vol.1から順に読むことで理解が深まりますが、評価から治療へのつなげ方に悩んでいる中堅層にとっては、本書が最も刺さる内容になるはずです。
また、教育や指導の立場にある療法士が、後輩に「なぜこの評価が必要なのか」を説明する際の理論的裏付けとしても有用です。
実際に読んだ感想・臨床での活かし方
vol.1・vol.2を読んだ際は、「ここまで視えるのか」という驚きが強かったのに対し、vol.3では「視えたあと、どう動くか」を考えさせられました。
特に印象的だったのは、画像所見を絶対視せず、動作や症状、患者背景と照らし合わせながら解釈する姿勢が一貫している点です。
これは臨床で陥りがちな“画像に引っ張られる評価”への強い警鐘でもあり、理学療法士としての臨床推論力を鍛えられる内容だと感じました。
実際の臨床では、評価時に超音波で確認した所見を、その場で患者に説明し、治療方針を共有する場面が増えました。
結果として患者の納得感が高まり、治療への主体的な参加を促す効果も実感しています。
まとめ
理学療法超音波学 vol.3 は、シリーズの集大成というよりも、「次の段階」への入り口となる一冊です。
vol.1が基礎、vol.2が応用、そしてvol.3が統合と臨床実装という位置づけは非常に明確で、シリーズを通して読むことで超音波活用の全体像が見えてきます。
超音波を単なる評価機器で終わらせたくない理学療法士にとって、本書は臨床の質を一段引き上げてくれる心強いパートナーになるでしょう。

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