この本を手に取った理由
脳卒中や脊髄損傷、神経筋疾患の患者さんを担当する中で、
「評価はできているつもりだが、治療の根拠をうまく説明できない」
「病期ごとの介入の整理が曖昧なまま経験則で進めてしまっている」
と感じたことはないでしょうか。
神経理学療法は奥が深く、基礎医学・運動学・臨床推論を統合する力が求められます。
そうした悩みに正面から応えてくれるのが『神経理学療法学 第3版』です。
書籍の基本情報
書名:神経理学療法学 第3版
シリーズ名:標準理学療法学 専門分野
監修:奈良 勲
編集:森岡 周、阿部 浩明
出版社:医学書院
発行年:2022年
定価:5,720円(税込)
ISBN:978-4-260-04989-4
判型・頁数:B5判・約470頁
電子版:あり(医学書院電子配信サービス対応)
書籍の概要と特徴
本書は、神経理学療法を学ぶ理学療法学生から、臨床経験を積んだ理学療法士までを対象とした標準的教科書です。
第3版では、従来の神経生理学的アプローチの整理に加え、近年重視されている運動学習理論、課題指向型アプローチ、エビデンスに基づく理学療法(EBPT)の視点が強化されています。
特に脳卒中リハビリテーションについては、急性期・回復期・生活期それぞれの病期特性を踏まえた評価と介入が詳しく解説されており、「なぜその治療を行うのか」を理解しやすい構成になっています。
単なる手技集ではなく、臨床推論の軸を育てる一冊と言えるでしょう。
目次と各章の内容
I 脳卒中の理学療法
脳卒中の病態生理から機能障害の特徴、評価方法、治療戦略までを網羅的に解説しています。
急性期のリスク管理、回復期における運動再学習、生活期での活動・参加への支援など、病期別の理学療法の考え方が明確に整理されています。
臨床で迷いやすい「今、この時期に何を優先すべきか」を考える手がかりになります。
II 神経筋疾患の障害と理学療法
筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、末梢神経障害など、多様な神経筋疾患を取り上げ、それぞれの病態と理学療法の役割を解説しています。
進行性疾患に対する理学療法の目的設定や、廃用予防、QOL向上の視点が丁寧に述べられており、長期的関わりを考える上で参考になります。
III 頭部外傷の障害と理学療法
外傷性脳損傷による運動障害だけでなく、高次脳機能障害や行動障害にも触れ、包括的なリハビリテーションの視点を提示しています。
評価から介入までの流れが整理されており、多職種連携を意識した理学療法の考え方が学べます。
IV 脊髄損傷の障害と理学療法
損傷レベル・損傷様式に応じた機能障害の理解を基に、基本動作、移動、ADLへの介入が解説されています。
急性期から慢性期までの理学療法の役割が体系的に示されており、臨床現場での判断に直結する内容です。
読んで得られること
この本を読むことで、神経系疾患に対する理学療法を「なんとなくの経験」から「根拠をもった実践」へと引き上げることができます。
- 神経系障害の病態と機能障害の関係が整理できる
- 評価結果をどのように治療に結びつけるかが理解できる
- 病期や疾患特性に応じた介入の考え方が身につく
- 臨床推論を言語化する力が養われる
どんな人におすすめか
- 神経理学療法を体系的に学び直したい理学療法士
- 脳卒中や脊髄損傷の担当が増えてきた若手セラピスト
- 評価と治療のつながりに自信が持てない方
- 学生指導や新人教育に標準テキストを探している方
実際に読んだ感想・臨床での活かし方
臨床で本書を参照して感じたのは、「評価結果をどう解釈し、次の一手をどう考えるか」が明確になる点です。
例えば脳卒中患者の立ち上がり動作一つをとっても、筋力だけでなく感覚障害や姿勢制御、課題特性をどう捉えるかが整理されており、治療の引き出しが増えました。
また、学生や後輩に説明する際にも、本書の図表や構成を基に話すことで、自分自身の理解も深まると感じています。
神経理学療法の「軸」を作るための参考書として、長く手元に置いておきたい一冊です。
まとめ
『神経理学療法学 第3版』は、神経系リハビリテーションを学ぶ上でのスタンダードであり、臨床推論力を高めてくれる教科書です。
知識の整理だけでなく、「なぜこの治療を行うのか」を考える力を養いたい理学療法士にとって、非常に価値のある一冊と言えるでしょう。

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