変形性膝関節症の保存療法を深く理解し、臨床に活かすための一冊

リハビリの現場から感じる課題

変形性膝関節症(KOA)は、理学療法士・作業療法士がもっとも頻繁に担当する疾患の1つです。

しかし、同じ「膝OA」といっても症状は患者ごとに異なり、痛みの発生機序動作特性筋力低下の背景生活スタイルによってアプローチは大きく変わります。

結局、どの因子を見て、どこから介入すべきなのか?

この悩みを抱え続けているセラピストも少なくありません。

そんな中で、構造的理解から評価・運動療法まで体系的に整理されているのが『変形性膝関節症の保存療法』です。

膝OAを深く理解したいセラピストにとって、知識と実践の両面を強化してくれる一冊となっています。


書籍の基本情報

書名:変形性膝関節症の保存療法

著者:山田 英司(理学療法士)

出版社:運動と医学の出版社

発行年月:2022年2月1日(印刷版)

判型/ページ数:B5変型判/192頁

ISBN:978-4-904862-50-6

定価:本体4,800円(税抜)/5,280円(税込)

シリーズ名:特記なし(単著)

電子版:あり(電子版ISBNあり・2024年9月24日発売)


書籍の概要と特徴

本書は、変形性膝関節症の保存療法を「解剖学的・力学的理解」「機能評価」「運動療法」「生活指導」まで一貫したストーリーで学べる構成になっています。

特徴としては、以下の3点が特に優れています。

  • 疼痛メカニズムの解説が非常に丁寧で、関節構造・力学・滑走の概念が整理されている点。
  • 2つ目は、手技や運動療法が「なぜその方法が必要なのか」に根拠を添えて説明されていること。
  • 3つ目は、臨床で“そのまま使える”評価視点が豊富に提示されている点です。

動作観察の要点、荷重ラインの崩れ、膝蓋骨の滑走不全、伸展ラグなど、臨床で迷いやすいポイントがクリアになる構成は、若手はもちろん、経験者にも気づきが多い内容となっています。


目次と各章の内容

以下では、各章のテーマ・目的・内容要約・臨床での活用ポイントをまとめます。章タイトルはそのまま自然な文体で紹介します。

膝関節の構造と力学

膝関節の基本構造から、内反モーメントの増大や荷重線の偏位など、膝OAに関わる力学を丁寧に解説。

特に「KAM(膝関節内反モーメント)」の解説は臨床動作観察の視点を整理するのに役立ちます。

活用ポイント:疼痛発生の背景にある構造的ストレスを推察できるようになる。

疼痛と変形のメカニズム

痛みがどの組織から生じているのか、炎症性の痛みと力学的な痛みの違い、可動域低下が引き起こす二次的なオーバーストレスなどを学べます。

活用ポイント:疼痛のタイプに応じた評価と介入の根拠付けが可能になる。

変形性膝関節症の評価

立位・歩行・動作の観察、膝蓋骨の可動性、伸展ラグ、下肢アライメント、股関節・足部の影響まで網羅。評価項目が多い膝OAを“迷わない順番”で整理してくれています。

活用ポイント:評価結果から治療方針につながる“ストーリー”を作れるようになる。

保存療法の考え方

保存療法の基本である運動療法・徒手療法・生活指導について、介入の目的と具体例が示されます。

特に「痛みを減らすために何を優先するか」が非常に明確。

活用ポイント:運動療法と日常生活指導の役割を整理して説明できる。

運動療法の実際

大腿四頭筋強化だけでなく、股関節外転筋・内外旋筋、足部の安定性など、多部位を含めた運動療法の重要性を解説。レップ数や注意点まで具体的です。

活用ポイント:ホームエクササイズの処方精度が向上する。

徒手療法とその適応

膝蓋骨のモビライゼーション、関節包の硬さへのアプローチ、滑走改善の徒手療法が写真付きでわかりやすく紹介。

活用ポイント:疼痛軽減のための即時効果を引き出しやすい。

生活指導とセルフケア

荷重線のコントロール、歩き方、階段動作、減量指導など、日常生活の改善点を根拠とともに提示。

活用ポイント:患者教育の質が向上し、再発予防に強い。

総合的なアプローチ

保存療法全体を通した介入の流れを再整理。評価→課題抽出→運動療法→生活指導の一連のストーリーが明確になる内容です。

活用ポイント:治療の優先順位付けがしやすく、説明の一貫性も高まる。

引用の中に「膝OAの保存療法は、単に筋力を鍛えるだけでは不十分である。疼痛の背景にある力学的要因を見極めることが、最も重要である」という言葉があり、多くの臨床家に響く一文です。


読んで得られること

  • KOAの疼痛発生メカニズムの理解が深まる
  • 評価ポイントの優先順位が整理される
  • 運動療法と徒手療法の根拠がはっきりする
  • 患者教育の要点が明確になる
  • 膝だけではなく股関節・足部との関連性を説明できる
  • 臨床で迷いがちな「どこから介入すべきか」がわかる

特に「膝だけをみてはいけない」「荷重線をコントロールする」という視点は、読後すぐに臨床で生きる内容です。


どんな人におすすめか

  • 膝OAを担当することが多いPT・OT
  • 動作分析に苦手意識がある若手セラピスト
  • 評価→治療の流れを体系的に整理したい人
  • エビデンスと臨床経験を結びつけたい人
  • 膝痛の再発予防プログラムを強化したい人

日常的に膝OAの患者を担当するなら、確実に読んでおいて損のない一冊です。


実際に読んだ感想・臨床での活かし方

本書を読んで最も強く感じたのは、「評価が変われば治療が変わる」ということです。

特に、膝蓋骨の滑走不全や伸展ラグなど、見落としがちな機能低下に着目できるようになり、疼痛改善のスピードが向上しました。

また、日常生活指導の具体性が高いため、患者への説明が非常にしやすく、セルフケアの継続率も向上しました。

「歩き方」「階段の登り方」「座り方」などは、実際の臨床場面でもそのまま使える即効性があります。

さらに、膝だけでなく股関節や足部の機能に着目する重要性を再認識でき、全体像を捉えたアプローチが身につく一冊でした。

若手だけでなく、経験を重ねたセラピストにも新しい視点を与えてくれる内容です。


まとめ

変形性膝関節症は、痛みの原因が多様で、評価と治療のアプローチも複雑です。

本書『変形性膝関節症の保存療法』は、その複雑さを整理し、臨床で活かせる明確な指針を示してくれる頼れる一冊です。

  • 疼痛のメカニズム
  • 荷重線の考え方
  • 的確な評価
  • 根拠ある運動療法
  • 患者が続けやすい生活指導

これらすべてを体系的に理解し、臨床力を底上げしてくれます。

膝OAの治療に悩むセラピストに、心からおすすめしたい一冊です。

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