この本を手に取った理由
足関節背屈制限を評価するとき、「アキレス腱が硬いから」と無意識に決めつけてしまっていないでしょうか。
私自身、臨床の中でアキレス腱へのストレッチやモビライゼーションを繰り返しても、背屈可動域が思うように改善しない症例を数多く経験してきました。
本書を手に取った理由は、その“当たり前”を一度疑い、足関節拘縮を組織レベルで捉え直したいと感じたからです。
書籍の基本情報
書名:足関節拘縮の評価と運動療法
著者:村野 勇
監修:林 典雄
出版社:運動と医学の出版社(臨床家シリーズ)
発行年:2022年
定価:6,380円(税込)
ISBN:978-4-904862-53-7
判型:B5変型判
ページ数:約290ページ
電子版:あり(PDF)
書籍の概要と特徴
本書の最大の特徴は、足関節拘縮を「関節が硬い」「アキレス腱が短縮している」といった単純な構図で捉えない点にあります。
筋、腱、筋膜、神経、滑走性といった要素を分解し、どの組織がどのように背屈制限へ関与しているのかを、評価と運動療法の両面から丁寧に解説しています。
特に印象的なのは、「アキレス腱はそもそも伸びる組織ではない」という前提に立ち、長母趾屈筋をはじめとした深層筋の滑走性に焦点を当てている点です。
目次と各章の内容
序章
足関節拘縮を「結果」ではなく「現象」として捉える視点が提示されます。
背屈制限がなぜ生じるのかを、構造と機能の関係から整理し、評価の出発点を明確にします。
第1章 足関節背屈制限の基礎理解
距腿関節・距骨下関節の運動学と、背屈制限時に生じる代償動作について解説されています。
単なるROM測定では見逃されやすいポイントが整理されています。
第2章 軟部組織の役割と評価
腓腹筋・ヒラメ筋だけでなく、長母趾屈筋、後脛骨筋、足底筋膜などの関与が詳述されます。
特に長母趾屈筋の滑走不全が背屈制限に与える影響は、本書の核となる部分です。
第3章 アキレス腱をどう捉えるか
「アキレス腱=伸ばす対象」という固定観念を再考し、腱の組織特性と荷重伝達の役割について解説されています。
ストレッチの意味を考え直す章です。
第4章 エコーを用いた評価
超音波画像を用いて、長母趾屈筋や周囲組織の滑走性を確認する方法が紹介されています。
エコーで見ることで、背屈制限の原因が視覚的に理解できます。
第5章 運動療法の実際
滑走性改善を目的とした運動療法が具体的に提示されます。
単なるストレッチではなく、運動連鎖を意識したアプローチが特徴です。
終章
足関節拘縮を「治す」ことよりも、「評価し続ける」重要性が語られ、臨床家としての視点を再確認させられます。
読んで得られること
- 足関節背屈制限をアキレス腱だけで判断しない視点
- 長母趾屈筋の滑走性という新たな評価軸
- エコーを用いた客観的な評価のヒント
- ストレッチ偏重から脱却した運動療法の考え方
どんな人におすすめか
- 足関節背屈制限の評価に行き詰まりを感じている理学療法士・作業療法士
- アキレス腱ストレッチの効果に疑問を持っている臨床家
- エコー評価を臨床に活かしたいと考えている方
- 組織レベルで運動療法を考えたいセラピスト
実際に読んだ感想・臨床での活かし方
本書を読んで最も印象に残ったのは、「長母趾屈筋の滑走性が重要」という一文でした。
背屈制限=アキレス腱という思考がいかに短絡的だったかを痛感させられます。
実際にエコーで長母趾屈筋の動きを確認すると、背屈時に滑走が乏しい症例が多く、アキレス腱への介入だけでは変化が出にくい理由が腑に落ちました。
以降は、背屈制限のある症例では必ず長母趾屈筋の評価を行うようになり、運動療法の選択肢が大きく広がりました。
まとめ
足関節拘縮をアキレス腱だけで説明しようとすると、評価も介入も行き詰まります。
本書は、「そもそもどの組織が問題なのか?」という原点に立ち返らせてくれる一冊です。
長母趾屈筋の滑走性、エコーによる可視化、そして組織特性を踏まえた運動療法。足関節背屈制限を本気で改善したい臨床家にとって、本書は確実に視野を広げてくれるはずです。

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