【敵を知れば、技は自ずと決まる】『林典雄の運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈 下肢編』で学ぶ「病態を見抜く力」とは

まずは本書の概要と構成をチェック ― 下肢評価の“本質”を体系的に学ぶ

林典雄先生による『運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈 下肢編』は、「どのように治すか」ではなく「どこを、なぜ治すのか」という臨床判断の根幹を徹底的に解説した一冊です。

下肢の主要関節(股関節・膝関節・足関節)を中心に、機能解剖学をベースとした評価法とその解釈が丁寧に説明されています。

以下に本書の主な目次構成を簡単に紹介します。


【簡単な目次と内容説明】

第1章:評価と解釈の原則
運動器疾患を理解する上で欠かせない「機能解剖学的思考」と「病態の見立て方」を解説。

第2章:股関節の評価と解釈
Ober testなど、股関節周囲の評価法を機能解剖的に分析。

第3章:膝関節の評価と解釈
McMurray testをはじめ、整形外科的テストを構造的背景から再検討。

第4章:足関節・足部の評価と解釈
長母趾屈筋や足底筋群の滑走障害を中心に、足部機能の連鎖を紐解く。

第5章:評価から治療へ ― 適応判断の思考法
病態を解釈し、そこから治療技術を“選び出す”プロセスを体系化。


どんな人が読むべきか ― 臨床に迷いを感じるセラピストへ

この書籍は、治療テクニックに自信がある人ほど一度立ち止まって読んでほしい内容です。

  • 「徒手療法を行っても改善しない」
  • 「評価が曖昧なまま治療を始めてしまう」
  • 「関節や筋の動きを“感覚”ではなく理論で説明したい」

そんな悩みを抱える理学療法士・作業療法士にとって、本書は“考える力を取り戻す”臨床再構築の書です。

また、臨床経験3〜10年ほどの中堅セラピストが読むと、自分の評価パターンを見直し、より根拠のある臨床推論へと進化させるヒントを得られるでしょう。


方法より「本質」へ ― 臨床で迷わないための思考の軸

理学療法士として臨床に立つと、常に「どんな治療を選ぶべきか」に迷います。

しかし、林典雄先生が繰り返し強調するのは、「方法論よりも病態理解」です。

運動療法か徒手療法かではなく、「なぜその関節が動かないのか」「なぜその筋が緊張するのか」を解釈できることが、結果的に最適な治療選択へと導きます。


テストを“形”で終わらせない ― 機能解剖が評価の質を決める

Ober testやMcMurray testを実施する際、骨盤肢位や関節の誘導方向を説明できるか

これが臨床家としての力量を分けます。

本書では、各テストの実施法を“解剖学的根拠”から解説し、単なる再現ではなく、「何を見ているのか」を理解する評価力を育てます。


「病態が決まれば、技は決まる」 ― 林典雄先生のメッセージ

林先生は言います。

「病態を解釈できれば、適応となる技は必然的に決まる」

治療技術の引き出しを増やす前に、適応を見極める力を磨くこと

それが、本書の中核的なテーマです。


臨床応用のヒント:観察と仮説が“治療の精度”を変える

本書を実践的に使うなら、「評価→仮説→検証」の流れを意識すると良いでしょう。
たとえば、

  • 動作分析から“動かない関節”を推定する
  • 触診で“原因筋”を特定する
  • 治療介入後に“再評価”で仮説を検証する

このサイクルを繰り返すことで、根拠ある治療が可能になります。


保存療法・術後リハにも活きる“共通言語”としての機能解剖学

観血的治療・保存療法のいずれでも、本書の内容は普遍的に活かせます。

解剖学を基盤にした評価は、どんな立場のセラピストにも通用する“共通言語”。

臨床現場での曖昧な判断を減らし、チームで共有できる臨床基盤を作ることにもつながります。


まとめ:技より先に、敵を知る

運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈 下肢編』は、徒手技術や治療手段の前に“考える力”を磨くための書です。

敵を知れば、技は自ずと決まる。

この言葉に共感する理学療法士・作業療法士に、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

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