ねこ背病 放置する人から老いていく|姿勢から見直す新しいリハビリの視点

日常でよく目にする“猫背”

リハビリの現場から日々感じる課題のひとつに、「猫背を軽く見てしまう」という問題があります。

姿勢が悪いだけだから…

と本人は思っていても、実際には痛み・疲労感・呼吸機能の低下・歩行の質低下など、生活のあらゆる場面に影響を及ぼすことを、私たち療法士はよく知っています。

そんな中、姿勢の本質を「ねこ背病」という概念として再定義し、全身の機能低下と老化の入り口として警鐘を鳴らしているのが、今回紹介する「ねこ背病 放置する人から老いていく」です。

姿勢改善の指導に関わる療法士にとっても、臨床の考え方が一段深まる一冊です。


書籍の基本情報

書名:ねこ背病 放置する人から老いていく

著者:園部俊晴

出版社:運動と医学の出版社

発行年月:2025年8月4日

定価:1,760円(税込)

判型・ページ数:A5判/102ページ

ISBN:978-4904862780

電子版:あり


本書の概要と特徴

本書は、「猫背=背中が丸い姿勢」という表面的な話ではなく、猫背の背景にある“全身の機能低下の連鎖”に光を当てています。

著者は、猫背を単なる姿勢不良ではなく、「ねこ背病」というひとつの状態像として扱い、肩・胸郭・骨盤・下肢の筋機能や関節配置の乱れがどのように老化を引き起こすかを丁寧に説明しています。

特徴として、単に“背筋を伸ばす”という指導ではなく、胸郭の柔軟性、股関節の機能、下肢筋力、呼吸パターンなど、全身の連動性を基盤とした姿勢改善を推奨している点が非常に臨床的です。

また、図解・写真が多く、一般読者でも理解しやすく、療法士にとっては指導に使える要素が明確に整理されています。


目次と各章の内容

本書は大きく3つの章で構成され、姿勢の基礎理解から実践的な改善方法まで一連の流れで理解できる構成になっています。

第1章 ねこ背病とは何か

ここでは、ねこ背を「老化の入り口」として位置づけ、肩こりや腰痛だけでなく、歩行速度低下、呼吸機能の悪化、転倒リスクの増加など、全身への影響が整理されています。

姿勢は見た目の問題ではなく、“機能の問題”であることを明確に示した章です。

臨床では患者に説明する際、この概念は非常に使いやすいと感じます。

第2章 ねこ背病が引き起こす身体の変化

ここでは、胸郭が硬くなることで呼吸が浅くなる、骨盤後傾から坐骨の支持が弱くなる、下肢の負担増が膝痛を誘発するなど、機能連鎖が図解で説明されています。

特に印象的なのは「ねこ背は背中の問題ではなく、背中に結果が現れているだけ」という一文。

療法士としても納得感が高く、姿勢評価の重要性を再確認できます。

第3章 姿勢を整える実践メソッド

最後の章では、胸郭のストレッチ、骨盤のリセットエクササイズ、下肢まで連動させた姿勢改善法など、実践できるエクササイズが紹介されています。

難しい動きは少なく、利用者が自宅で続けられる難易度に設定されている点が好印象。臨床でも即導入できる内容です。


読んで得られること

本書を読むことで得られる最大のメリットは、「姿勢は全身の機能の結果である」という視点の定着です。

  • 姿勢改善=背中を伸ばすではない
  • 猫背は老化の早期サイン
  • 筋力や柔軟性を含む機能全体を整える必要がある

といった考え方は、臨床での評価力を高めるだけでなく、患者教育にも非常に役立ちます。

また、姿勢改善が歩行の安定や痛みの軽減につながるプロセスも丁寧に示されているため、今後の介入設計に深みが増します。


どんな人におすすめか

  • デスクワークやスマホ使用が多く、慢性的に姿勢が丸まりやすい人
  • 肩こり・腰痛などの慢性痛を抱える人
  • 高齢者の姿勢改善に関わる療法士
  • 地域・クリニック・訪問で姿勢指導をするPT・OT
  • 猫背の改善を指導しているトレーナー

特に「猫背=意識の問題」と思われがちな環境では、本書の“全身の機能改善”という視点は非常に強力な指導ツールになります。


実際に読んだ感想・臨床での活かし方

臨床の視点で読むと、「姿勢は結果である」というテーマがとても腑に落ちる内容でした。

背中だけを見ていた頃より、骨盤の傾きや胸郭の硬さ、股関節の働きが姿勢形成に与える影響をより深く理解できます。

特に印象的だったのは、「ねこ背病という状態を放置することで、老化が一段加速する」という説明。

臨床でも、

姿勢の悪化 → 活動量低下 → 筋力低下 → 疲労しやすさ → さらに姿勢悪化…

という負のループによく遭遇します。

この概念をそのまま患者教育に使うだけでも、姿勢改善の意欲が高まると感じました。

また、エクササイズの難易度が低く、指導しやすい点も現場向けです。体幹や胸郭の調整が中心で、筋力に不安がある高齢者にも応用しやすい内容でした。


まとめ

ねこ背病 放置する人から老いていく」は、猫背を単なる姿勢不良ではなく、全身機能低下のシグナルとして再定義し、老化予防という視点で姿勢を捉え直した一冊です。

リハビリの現場では、誤ったセルフケアや過度な「胸を張る姿勢指導」が逆効果となるケースも少なくありません。

本書はそうした誤解を解き、エビデンスと臨床実践に基づいたアプローチを提供してくれます。

姿勢の本質を学び、患者指導に深みを加えたい療法士には特におすすめしたい内容です。

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