臨床現場で迷わないために──「疾患の基礎」を正しく理解する重要性
整形外科疾患は、理学療法士・作業療法士が最も多く関わる分野のひとつです。
日々の臨床で
「この疾患ってどんな特徴だったかな?」
「術後に注意すべきリスクは?」
と迷う瞬間、誰しも経験があるのではないでしょうか。
そんな時に心強い味方となるのが、『病気がみえる vol.11 運動器・整形外科』です。
この書籍は、疾患の概要・症状・診断・治療方針が、図解とともに整理されており、リハビリ職が安全に治療介入するための「医学的理解の地図」として活用できます。
リハビリの視点で読む『病気がみえる vol.11』の特徴
本書は、医学部生や医療従事者を対象に作られていますが、リハビリテーションの現場でこそ真価を発揮します。
その理由は、「疾患理解とリスク管理」という、リハビリの根幹を支える要素が網羅されているからです。
具体的には以下のような特徴があります:
- 疾患の発生機序・解剖の理解が深まる
筋・骨・関節の構造をイラストで可視化。
画像所見や病態の流れが一目で理解できます。 - 術式ごとの違いと注意点を整理できる
工関節置換術や骨折固定術など、代表的な整形外科手術の概要がわかりやすく記載されています。
→ リハビリ開始時期や負荷量設定の参考に最適。 - 症候の背景がつかめる
単なる「痛み」や「可動域制限」ではなく、その原因となる組織学的・生理学的要因を理解できる構成です。
リハビリ内容は少ない?──それでも読む価値がある理由
確かに、『病気がみえる vol.11』にはリハビリテーションの直接的な内容はあまり多くありません。
しかし、臨床で安全かつ根拠のある介入を行うためには、疾患の「医学的背景」を理解しておくことが不可欠です。
例えば:
- 脊椎圧迫骨折
:骨粗鬆症の進行度を理解していなければ、荷重指導で再骨折を招くリスクがあります。 - 人工股関節全置換術(THA)
:術式の違い(前方アプローチ・後方アプローチ)を把握していないと、脱臼方向への注意喚起が不十分になる可能性があります。 - 腱板断裂
:手術後の修復強度や再断裂リスクを理解していなければ、早期ROM訓練の判断を誤ります。
このように、疾患理解が「安全なリハビリ介入」へと直結することを考えると、本書はリハビリ職にとっての“教科書の土台”とも言えます。
目次構成から見る、活用しやすいポイント
『病気がみえる vol.11』は、全体が大きく以下の章構成で整理されています。
- 骨・関節・筋の基礎解剖
- 骨折・脱臼などの外傷
- 関節疾患(変形性関節症・関節リウマチなど)
- 脊椎・脊髄疾患
- スポーツ障害
- 小児整形外科疾患
- 手・足の疾患
この構成は、臨床での症例別検索にも非常に使いやすく、
「この疾患の病態を確認したい」
という時に即座に参照できる仕組みになっています。
臨床での具体的な活用シーン
- 新人教育・勉強会の資料づくりに
疾患概要をわかりやすく説明するスライドのベースとして活用可能。
特に画像が多いため、視覚的な理解を促す教材として優秀です。 - 初めて担当する疾患の予習に
「この疾患ってどんなリスクがあるの?」という疑問を、短時間で整理できます。 - 学生指導の場面で
臨床実習中の学生に、「この疾患を理解しておくとリハビリの根拠が見えてくる」と紹介する教材にも最適です。
シリーズで広がる「疾患理解のネットワーク」
『病気がみえる』シリーズは全巻で20冊以上あり、他にもリハビリ職に関連の深い巻があります:
- vol.2 循環器:心臓リハビリ・運動負荷量設定に必須。
- vol.4 呼吸器:呼吸理学療法を行う上での基礎医学書。
- vol.5 血液・免疫:自己免疫疾患やリウマチの理解に役立つ。
- vol.8 腎・泌尿器:水分管理・透析患者の運動療法に関係。
これらを併読することで、疾患横断的な視点からリハビリテーションを考察でき、より安全で根拠に基づいた臨床判断が可能になります。
まとめ:疾患を「みえる化」することが、安全なリハビリの第一歩
リハビリテーションは、単なる運動指導ではありません。
疾患の理解・合併症の予測・術後の経過を正しく把握することで、患者の回復を安全に導くことができます。
『病気がみえる vol.11 運動器・整形外科』は、そのための最適なリファレンス。
疾患理解を深めたいすべてのセラピストに、ぜひ一度手に取ってほしい一冊です。


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