リハビリの現場から感じる課題
現場で働いていると、患者さんと話しているうちに、必ず解剖学の話になります。
しかし実際には、
「触り方がわからない」
「そもそもどこを触っているのか不明」
「この辺をマッサージしている」
といった、あいまいな治療を目にすることが少なくありません。
臨床現場では、「筋を理解しているつもり」でも、実際に自分の手でその構造を正確に触れられるかというと、ギャップが生まれがちです。
そんなときに出会ったのが、浅野昭裕先生による『1日3分自触習慣!触診ドリル 上肢・頚部編』でした。
「自分の身体を教材にする」という発想で、触診技術を“再学習”できる一冊です。
書籍の基本情報
- 書名:1日3分自触習慣!触診ドリル 上肢・頚部編
- 著者:浅野 昭裕
- 出版社:運動と医学の出版社
- 発行日:2024年7月29日
- 定価:5,390円(税込)
- 判型:B5変形判
- ISBN:978-4904862681
- シリーズ名:なし
- 電子版:未確認
書籍の概要と特徴
この書籍は、「毎日たった3分の自触」で触診力を底上げすることを目的とした、画期的な触診ドリルです。
上肢と頚部にフォーカスし、骨・筋・腱・靭帯などの触察ポイントを、写真とわかりやすい解説で整理しています。
特徴的なのは、「他者に触れる前に、自分の身体で理解する」という学習ステップ。
理学療法士・作業療法士が臨床で即戦力となる触診スキルを、自分自身の身体を教材として再現性高く習得できる構成になっています。
特に印象的なのは、臨床的な
「なぜここを触るのか」
という目的意識が随所にある点です。
単なる解剖学の復習ではなく、「機能評価」「治療ターゲットの明確化」へと結びつく内容となっています。
目次と各章の内容
第1章 自触習慣のすすめ
浅野先生が提唱する“自触”の考え方を紹介。
「1日3分でも続けることが、触診感覚を鍛える最短ルート」
というメッセージが響きます。
また、習慣化するための工夫や、触診のモチベーション維持についても具体的に書かれています。
第2章 上肢の骨と筋の触診ドリル
上腕骨・橈骨・尺骨のランドマークを手がかりに、上肢の主要筋を自触で確認していく章。
上腕二頭筋や円回内筋など、臨床で頻出する筋を
「どこからどこまでが筋腹か」
「どんな方向に伸びているか」
まで細かく練習できます。
“ただ触る”ではなく“構造を意識して触る”ことを学べるのがポイントです。
第3章 肩甲帯と頚部の触診ドリル
肩甲挙筋・斜角筋群・僧帽筋など、触診の難易度が高い部位を中心に、姿勢変化や自重を利用した自触法が紹介されています。
「自分で触れる感覚」を通して、解剖学的イメージと運動学的理解がリンクしていく感覚が得られます。
臨床でも肩こり・頚部痛・上肢神経症状の評価に直結する部位ばかりで、すぐに実践に応用できます。
第4章 臨床への応用とフィードバック法
自触練習を続ける中で、感覚のズレや曖昧さに気づくことがあります。
本章では、その“ズレ”を修正する方法や、チーム内でフィードバックを行うためのコツも紹介。
臨床教育や新人指導にも応用しやすい章です。
読んで得られること
この本を読むことで、単なる「触診部位の暗記」ではなく、「自分の感覚を通じて理解する触診」が身につきます。
日々の臨床で、筋の位置や走行に迷わなくなり、評価や治療の再現性が高まります。
また、「解剖を頭で理解して終わり」から「身体で再現できる解剖」へと変わるため、若手セラピストだけでなく、経験者のスキル再構築にも最適です。
どんな人におすすめか
- 触診に苦手意識をもつ新人セラピスト
- 学生指導や勉強会で触診を教える立場の方
- 解剖学を“手の感覚”で再確認したい中堅・ベテラン療法士
- 時間がなくても毎日少しずつ練習したい方
とくに
「感覚的にわかっているつもりだけど、正確に触れていないかもしれない」
と感じる方にこそ、この“自触習慣”の効果は実感できるはずです。
実際に読んだ感想・臨床での活かし方
私はこの本をきっかけに、自主練習会を開く機会を設けました。
各自が自分の身体で触診練習を行い、感覚を共有しながらフィードバックし合うことで、これまで曖昧だった部位の触診が格段に明確になりました。
また、この本は自主練習に特化しているため、自宅で1人で取り組むスタッフも増えました。
「空いた時間に3分だけ練習する」習慣が広がり、職場全体の触診力の底上げにもつながっています。
いつでもどこでも実践できる手軽さと、確実に成果を感じられる構成に、正直感動しました。
まとめ
『1日3分自触習慣!触診ドリル 上肢・頚部編』は、「解剖を知る」から「触れて理解する」へと導く、セラピストにとっての“感覚リハビリ”のような一冊です。
短時間でも継続することで、臨床の見立てや手技の精度が変わります。
日々の臨床をより確実なものにしたい方、触診力をもう一度磨き直したい方に、心からおすすめします。


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