リハビリで向き合う「腰痛の難しさ」
腰痛のリハビリテーションは、理学療法士や作業療法士にとって永遠のテーマとも言えるでしょう。
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、圧迫骨折――。
診断名が明確なものもあれば、「原因が特定できない腰痛」も多く存在します。
特に、いわゆる非特異的腰痛(腰痛全体の約85%)に対して、どこからアプローチすべきか悩む場面は少なくありません。
そんな臨床家の葛藤に、明確な道筋を示してくれるのが成田崇矢先生の『臨床 腰痛』です。
「機能的腰痛」という概念がもたらす希望
本書の最大の特徴は、成田先生が提唱する「機能的腰痛」という考え方です。
これは「構造的異常ではなく、機能の変化が痛みを生んでいる腰痛」を指します。
つまり、組織損傷に頼らず、「どの組織に、どんな負荷がかかっているか」を仮説し、機能を整えることで痛みを改善していくという臨床的アプローチです。
成田先生は、機能的腰痛を以下の4つに大別しています。
- 椎間関節障害
- 仙腸関節障害
- 椎間板障害
- 筋・筋膜障害
これら4つの機能的病態を正しく評価し、原因組織を見極めることができれば、腰痛治療の「迷い」は大きく減るでしょう。
本書の構成と学べる内容
本書は理論書というよりも、「臨床推論書」に近い構成です。
各章で評価→仮説→治療→検証の流れが丁寧に整理されており、まさに現場でそのまま使える内容になっています。
目次構成の一例(抜粋)
- 腰痛の病態整理と「非特異的腰痛」への誤解
- 機能的腰痛の4分類と鑑別の考え方
- 触診による原因組織の仮説立案
- 負荷改善の具体的手法(関節・筋膜・神経アプローチ)
- ケーススタディ:その場で変化を出す腰痛治療
ページを追うごとに、評価の視点と治療の解像度が上がっていく構成で、読むたびに臨床の引き出しが増えていきます。
読後に手に入る「腰痛への確信」
この本を読み終えると、「腰痛=原因不明ではない」という確信が生まれます。
「原因組織を仮説する」「負荷を改善する」という一見シンプルな考え方の中に、腰痛治療の本質が凝縮されています。
- 評価の視点が広がる
- 治療の引き出しが明確になる
- その場で変化を出す臨床が可能になる
まさに、臨床家としての“観察眼”を磨く一冊といえるでしょう。
どんな人におすすめか
本書は次のようなセラピストに特におすすめです。
- 腰痛患者の評価に自信が持てない方
- 「非特異的腰痛」という言葉にモヤモヤしている方
- 機能的な仮説思考を身につけたい方
- 一人ひとりの腰痛に「納得のいく説明」をしたい方
学生や若手はもちろん、中堅・ベテランの臨床家にとっても、再現性のある腰痛治療の基礎理論として再確認すべき内容です。
臨床現場への応用と今後の展望
成田先生が示す腰痛の捉え方は、単なる治療テクニックではなく、「観察」と「思考」のトレーニング法でもあります。
「機能的腰痛」という言葉は、構造的異常だけに頼らず、“患者の動作・姿勢・負荷”を通じて痛みの原因を探るという、リハビリの原点を思い出させてくれます。
腰痛治療における「見立て」を磨きたい全ての臨床家にとって、本書は必携の一冊です。
まとめ
腰痛の85%が非特異的――。
その言葉に、私たちはどれほど逃げてきたでしょうか。
成田崇矢先生の『臨床 腰痛』は、その迷いを断ち切るための実践的な手引きです。
「原因組織を仮説し、負荷を改善する」というシンプルな原則を、あなたの臨床に取り戻してみませんか。


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