こんな悩みありませんか?
理学療法の現場では、徒手療法や触診、徒手的評価など、“触る・動かす” によって患者の身体を“感じ取る”ことが多くあります。
しかし、それだけでは「痛みの原因」「筋・靭帯・筋膜など軟部組織の構造・機能的な状態」「動きに伴う内部組織の挙動」などは、どうしても“ブラックボックス”的に扱われがちです。
このような限界を感じ、
「もっと可視化できたら」
「もっと解像度を上げられたら」
と思うセラピストにとって、本書は強力なツールになります。
私自身、臨床で“触診・経験・勘”に頼らざるを得なかった場面で、「エコーで見える化する」という選択肢があることを知り、本書に強く惹かれました。
こんな悩みありませんか?
- 「なぜこの筋・靭帯が痛むのか」が臨床で確信を持ちにくい
- 動きや姿勢の評価が主観的になりがちで、再現性・説明性に限界を感じている
- 患者に「今なぜ痛いか/なぜ改善しているか」を“見える形”で示したい
それらに対して、“超音波(エコー)” を用いた画像・動態評価は、新しい可能性を広げてくれます。本書 『理学療法超音波学 vol.1』 は、まさにその「可視化のための知恵と技術」を集めた一冊です。
書籍の基本情報
書名:理学療法超音波学 vol.1 — 運動器理学療法の可視化に挑戦
監修/編集:日本運動器理学療法超音波フォーラム、編集代表 小柳 磨毅ほか
出版社:運動と医学の出版社
発行年:2024年5月
定価:¥6,490(税込)
判型・ページ数:B5変版/238ページ
ISBN:978-4-904862-66-7
電子版:あり(電子版発売日 2024年6月3日)
書籍の概要と特徴
本書は、運動器領域における理学療法評価の“透明度”を高めるために、超音波画像の具体的な活用方法をまとめた一冊です。
特徴的なのは、単なる画像解説ではなく、“動きと機能”を超音波で捉えて臨床に繋げる構成になっている点です。
- 肩・股関節
- 組織弾性
- 神経・血行
- 評価・リハビリテーション
という4つの大テーマにわたり、合計17の実践的トピックを収載。
執筆者はいずれも研究・臨床経験が豊富で、実際のリハビリ場面へそのまま応用しやすい構成になっています。
さらに、多くのトピックには動画が付属し、文章や静止画では理解が難しい「動態」「変化」「組織の反応」を直感的に学べることも大きなメリットです。
目次と各章の内容
本書の内容は以下の4領域に大きく分かれています。
それぞれの章では、対象組織の解剖、評価のポイント、超音波画像の特徴、臨床での活かし方が具体的に解説されています。
肩・股関節
肩の3rd肢位における上腕骨頭の動態評価、肩関節拘縮における末梢神経の関与、投球障害肩の評価、股関節内転筋群の力学特性、股関節不安定性の可視化など、複雑な肩・股関節の動きをエコーで捉える方法を紹介。
特に、徒手評価だけでは分かりにくい「関節面のズレ」「筋群のタイミング」「神経の滑走性」が画像化される点は、臨床に直結しています。
組織弾性
膝蓋腱や肩関節靭帯、後方軟部組織の弾性計測、膝蓋下脂肪体の硬度評価など、軟部組織の“硬さ”を可視化するアプローチを解説。
徒手療法やストレッチ介入後の変化を客観的に把握でき、再評価の質を高めるための情報が豊富です。
神経・血行
坐骨神経痛の評価、末梢神経障害のメカニズム確認、神経牽引時の血流変化、頚髄血行動態と姿勢の関連など、これまで超音波で扱いにくかった領域を丁寧に紐解いています。
神経の滑走性が画像で見えることは、治療方針の明確化に直結します。
評価・リハビリテーション
スポーツ選手のメディカルチェック、動態解析、狭窄性腱鞘炎のアプローチ、体幹筋厚と下肢障害の関連など、リハビリ評価から介入・予防まで幅広く応用できる内容を掲載。
日々の臨床で「そのまま使える技術」が多く紹介されています。
読んで得られること
この一冊から得られる最大のポイントは、徒手評価と超音波評価を組み合わせることで、臨床の解像度が劇的に上がることです。
具体的には、
- 痛みの原因を構造レベルで説明できる
- 動作中の筋・腱・靭帯の挙動を把握できる
- 介入前後の変化を客観的に示せる
- 患者への説明がわかりやすくモチベーション向上につながる
- 多職種との連携で“根拠ある情報共有”が可能になる
など、日常の評価・治療に直結するメリットが非常に大きいといえます。
どんな人におすすめか
- 運動器分野でリハビリを行う理学療法士・作業療法士
- スポーツ現場で選手の動きと組織状態を評価したい人
- 術後リハや慢性疼痛など複雑なケースを多く扱う人
- 徒手だけでなく、客観的な評価軸を持ちたい人
- 教育・研究活動で「動きの理解」を深めたい人
特に、若手セラピストにとっては理解の補助ツールとして非常に有用で、経験値の差を縮める助けになります。
実際に読んだ感想・臨床での活かし方
本書を通して強く感じたのは、超音波は「特別な人だけが扱う高度な技術」ではなく、理学療法士が日常的に使うべき“第三の評価法”だということです。
肩の複雑な痛み、股関節の不安定性、術後の組織変化、神経症状…
これらは徒手評価だけではどうしても曖昧さが残ります。
しかし、超音波によって「今何が起きているのか」をリアルタイムで見られることで、仮説が明確になり、治療計画の質が一段階上がります。
また、患者にとっても「変化が見える」ことは大きな安心につながり、治療への参加意欲が高まると感じます。
まさに“臨床の透明度を上げる一冊”といえる内容です。
まとめ
『理学療法超音波学 vol.1』は、徒手評価と画像評価をつなぐ架け橋となる実践書です。
超音波による“見える化”によって評価と治療の精度が高まり、臨床の再現性・説明性・説得力が向上します。
運動器リハビリに携わるすべてのセラピストにとって、自身の臨床をアップデートする大きな武器になる一冊です。


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