リハビリの現場から感じる課題
徒手療法を学ぶ際に、解剖や病態を理解した上で実践できていますか?
なんとなく筋を触って手技を当てはめるだけでは、本当の臨床家と言えるのでしょうか。
リハビリの現場に立つと、腰部・股関節周囲の痛みは“構造”と“機能”が複雑に絡み合っているため、どこから評価し、どのように治療へつなげるか迷いやすい領域だと痛感します。
その迷いを体系的にほどき、臨床の判断力を底上げしてくれるのが、園部俊晴氏による『徒手療法ガイドブック』腰部・殿部・股関節・大腿編です。
本書は、手技のマニュアルではなく「臨床思考を鍛える一冊」として圧倒的に実用的です。
書籍の基本情報
著者:園部俊晴
出版社:運動と医学の出版社
発行年月:2024年12月
判型・ページ数:B5変型/311頁前後
定価(税込):7,920円(本体7,200円+税10%)
ISBN:978-4-904862-72-8
電子版:PDF形式/ダウンロード配信(2024/12/23発売)
シリーズ名:『園部俊晴の臨床』シリーズ
書籍の概要と特徴
本書は、腰部・殿部・股関節・大腿の機能解剖・病態・評価・徒手療法を総合的に整理したガイドブックです。
園部氏が長年の臨床で培ってきた「病態を読み解く視点」が随所に詰まっており、単なる手技の羅列ではなく「なぜそうするのか」が明確に語られている点が最大の特徴です。
- 痛みの原因を構造 × ストレスから徹底分析
- 評価の目的を明確化し、プロセスを見える化
- 触診の基準を“臨床推論”と結びつけて説明
- 手技の「理由」が明確で再現性が高い
- 迷いやすい部位(中殿筋後部線維、外旋筋群、仙腸関節など)に特化
- 図・写真・文章のバランスがよく、理解が進みやすい
評価と治療が一本の線でつながる構成で、実践的でありながら教育教材としても優れています。
目次と各章の内容
第1章 腰部の機能解剖と病態理解
腰椎の安定性と可動性の関係、椎間関節や筋のストレスを整理し、「どこに負担がかかりやすいのか」を解剖学的に示しています。
腰痛の理解が深まる内容です。
第2章 腰部痛に対する評価
運動連鎖、荷重ストレス、可動域の偏りなど、臨床で見落としがちな評価ポイントが具体的に解説されます。
治療指針の組み立てがスムーズになります。
第3章 腰部の徒手療法
胸腰筋膜、多裂筋、腰方形筋、椎間関節周囲など、重要部位へのアプローチが“なぜ必要か”という理由とともに提示。
再現性が高い内容です。
第4章 殿部痛の病態と評価
殿部は複数の組織が集まるため鑑別が難しい領域。
本章では深層外旋筋・中殿筋・仙腸関節などを整理し、痛みの背景を明確にしていきます。
第5章 殿部に対する徒手療法
中殿筋後部線維、外旋筋群、仙腸関節周囲など、臨床で苦手とされやすい部位へのアプローチを丁寧に解説しています。
第6章 股関節の機能解剖・病態
インピンジメント、内旋制限、殿筋群のアンバランスなど、スポーツ現場でもよく遭遇する病態を解説。
構造とストレスの理解が深まります。
第7章 股関節の評価と徒手療法
評価を「機能」「構造」「ストレス」の3要素に分類し、どのように病態を読み解くかがよく分かる内容。
内旋制限の原因鑑別など、臨床に直結します。
第8章 大腿部痛の病態理解とアプローチ
大腿部前面・後面の張りや痛みについて、筋膜張筋やハムストリングス、直筋などへの理解を深める章。
スポーツ選手の対応にも役立ちます。
読んで得られること
- 病態理解と徒手療法がつながる
- 評価の“目的”がブレなくなる
- 触診の精度が上がり、治療の再現性が向上
- 腰部・殿部・股関節周囲の痛みを体系的に理解できる
- 患者説明に根拠が持てる
- 新人教育や後輩指導にも使いやすい
特に「評価を軸に治療を考える力」が大きく伸びます。
どんな人におすすめか
- 徒手療法を基礎から学び直したい人
- 腰部・殿部・股関節の評価が苦手な人
- 触診の精度を高めたい人
- 手技の“なぜ”を明確にしたい人
- 整形外科領域の臨床力を高めたいPT・OT
- 指導者として体系的に教えたい人
実際に読んだ感想・臨床での活かし方
本書を通して強く感じるのは、「手技は手段であり、病態理解こそが治療である」という一貫したメッセージです。
特に、中殿筋後部線維の触診や外旋筋群の鑑別は、臨床で非常に役立ちました。
これまで“硬いからほぐす”という曖昧な判断だったものが、姿勢や荷重の偏りとの関連から根拠を持って説明できるようになり、治療効果の再現性が向上しました。
日々の臨床の“迷い”が減り、評価から治療までの流れがクリアに理解できるようになる一冊だと感じます。
まとめ
『徒手療法ガイドブック』腰部・殿部・股関節・大腿編は、解剖・病態理解・評価・徒手療法が一本に統合された名著です。
“なんとなく触るだけの徒手療法”から抜け出し、臨床家としての思考力を磨きたい療法士に、強くおすすめできる一冊です。

コメント