理学療法超音波学 vol.2|Vol.1からどう進化した?運動器理学療法を“可視化”する実践書の真価

リハビリの現場から感じる課題

リハビリの現場で

この評価、本当に合っているだろうか

触診や動作分析の裏付けが欲しい

と感じることは少なくありません。

近年、理学療法士・作業療法士の間で超音波(エコー)を評価ツールとして活用する動きが広がっていますが、実際には

「どう臨床に落とし込めばいいのか分からない」

という声も多いのが現状です。

そんな中で刊行されたのが『理学療法超音波学 vol.2』です。

本書は、基礎を扱ったVol.1を踏まえ、より実践的に「運動器理学療法を可視化する」ことに焦点を当てた一冊となっています。


書籍の基本情報

書名:理学療法超音波学 vol.2 運動器理学療法の可視化に挑戦

監修:日本運動器理学療法超音波フォーラム

編集代表:谷口圭吾

編集:浅野昭裕・小柳磨毅・林典雄・福井勉・村木孝行

出版社:運動と医学の出版社

発行年:2024年

定価:6,490円(税込)

判型:B5変形

ページ数:224ページ

ISBN:978-4904862711

シリーズ:理学療法超音波学

電子版:なし(紙媒体のみ)


書籍の概要と特徴

理学療法超音波学 vol.2』の最大の特徴は、超音波を「見る技術」から「臨床推論に使う技術」へと引き上げている点にあります。

Vol.1では、プローブ操作や基本的な描出像、解剖学的理解といった土台作りが中心でした。

一方でVol.2は、その土台の上に立ち、運動器疾患や機能障害をどのように評価し、治療戦略へ結びつけるかに踏み込んでいます。

単なる画像集ではなく、

「この所見をどう解釈するのか」

「触診や動作分析とどう統合するのか」

といった臨床思考のプロセスが丁寧に言語化されている点が、本書の大きな価値です。


目次と各章の内容

本書の冒頭では、理学療法における超音波画像の位置づけと、Vol.1からVol.2へと学びをどう発展させるかが整理されています。

ここでは、超音波を「診断の代替」ではなく、「理学療法評価を補強するためのツール」として用いる姿勢が明確に示されます。

評価の目的設定、他の評価手段との組み合わせ方など、全章を通して共通する考え方が提示されており、読み進めるための土台となる章です。

続く章では、肩関節周囲の評価が取り上げられます。

腱板や上腕二頭筋長頭腱といった頻出部位について、描出方法だけでなく、臨床で問題となりやすい所見の捉え方が詳しく解説されています。

特に、疼痛や可動域制限と超音波所見をどのように結びつけるか、動作時評価をどう解釈するかといった点は、運動器理学療法に直結する内容です。

次に、肘関節・前腕領域に関する章では、筋・腱・神経といった複数組織をどう見分け、評価に活かすかがテーマとなります。

局所所見に注目しすぎる危険性にも触れられており、超音波所見を全体像の中でどう位置づけるかという視点が強調されています。

膝関節の章では、臨床で遭遇頻度の高い前面・内側・後面構造を中心に解説が進みます。

静止像による評価に加え、膝屈伸や荷重条件の変化による動的評価の重要性が示されており、Vol.1よりも一歩踏み込んだ使い方が提示されています。

運動療法の仮説立案にどう結びつけるかという点が、この章の大きな特徴です。

足関節・足部の章では、解剖学的に複雑な構造を超音波でどう整理するかが丁寧に説明されています。

触診だけでは把握しづらい組織の位置関係を可視化し、歩行や立位動作との関連で評価する視点が盛り込まれています。

臨床で迷いやすい場面を想定した解説が多く、実践的な章といえます。

脊柱・体幹周囲を扱う章では、深部筋や支持機構の評価がテーマとなります。

描出の難易度が高い領域であることを前提に、完璧な画像を求めるのではなく、「評価として何が分かれば十分か」という現実的な視点が示されます。

姿勢制御や体幹機能との関連づけは、理学療法士ならではの内容です。

後半の章では、これまでに紹介された各部位の評価を踏まえ、超音波所見を臨床推論にどう組み込むかが整理されます。

単一所見に引っ張られない考え方、仮説検証のプロセス、再評価の視点などが言語化されており、超音波を使い続けるための思考フレームが提示されます。

最終章では、介入前後での超音波評価の活用や、患者への説明ツールとしての使い方が取り上げられます。

画像を共有することで患者理解をどう深めるか、治療選択にどう影響を与えるかといった点まで踏み込んでおり、Vol.2全体を締めくくる内容となっています。

全体を通して、Vol.1が「正しく描出し、理解するための教科書」だとすれば、Vol.2は「臨床で迷いながら使いこなすための実践書」と位置づけられます。

目次構成に沿って読むことで、超音波評価が自然と臨床思考の一部として組み込まれていく構成になっています。


読んで得られること

本書を読むことで、超音波画像を単独で評価するのではなく、触診、徒手検査、動作分析と統合して考える視点が身につきます。

Vol.1で基礎を学んだ読者にとっては、

「なるほど、だからこの像を見るのか」

という腑に落ちる体験が多いはずです。

また、評価結果を治療プログラムにどう反映させるかという具体的なヒントも得られるため、明日からの臨床に直結します。


どんな人におすすめか

この本は、すでに超音波に触れた経験がある理学療法士・作業療法士に特におすすめです。

Vol.1を読んだが、臨床での活用にまだ自信がない人、エコーを使っているものの「見て終わり」になっている人には、大きな気づきを与えてくれます。

一方で、これから超音波を学び始めたい方は、先にVol.1で基礎を押さえてから本書に進むと理解が深まるでしょう。


実際に読んだ感想・臨床での活かし方

Vol.1と比較して感じたのは、臨床家目線の濃さです。

Vol.1は教科書的で、学習用として非常に優れていましたが、Vol.2は「現場でどう考えるか」に重心があります。

実際の臨床では、画像がきれいに出ないことも多く、判断に迷う場面もあります。

本書では、そうした理学療法士が直面しやすい状況を前提に話が進むため、読みながら自分の臨床場面を自然と重ね合わせることができました。

特に、評価結果を患者への説明や運動指導にどうつなげるかという視点は、臨床で即活用できるポイントです。

超音波を「専門家の道具」ではなく、「患者との共有ツール」として使う発想が得られる一冊だと感じました。


まとめ

理学療法超音波学 vol.2』は、Vol.1で築いた基礎を臨床実践へと昇華させる一冊です。

超音波を使った評価を、理学療法の思考プロセスにどう組み込むかを学びたい人にとって、非常に価値の高い内容となっています。

Vol.1と併読することで、超音波の理解は点から線へ、そして面へと広がっていくはずです。

運動器理学療法をより深く、より確かなものにしたい臨床家に、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

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