そもそも、なぜ自分はこのような書籍紹介サイトを始めたのか。
時々、自分でも考えます。
努力する世界が狭い
きっかけの一つは、ある後輩との何気ない会話でした。
症例の相談に乗った後、後輩がこう言ったんです。
「このような知識って、どこで勉強したんですか?」
私は答えました。
「この先生、知ってる?」
すると、
「知らないですね…」
と。
その瞬間、はっとしたんです。
理学療法や作業療法の世界で有名な先生方の存在を、意外にも知らないまま臨床をしている人が多いんだなと。
つまり、勉強する“世界”がとても狭い。
どうやって調べているのか聞くと、
「専門学校時代の教科書」
と
「Google先生」。
──これでは、もったいない。
もちろん文献を読むことも大切ですが、現場を支えてきた先生方の考え方や知識に触れることは、何より貴重な学びになります。
私自身の知識だけで導けない瞬間が必ず来る。
だからこそ、後輩たちが“新しいもの”に触れる機会を増やしたいと思いました。
勉強会に行く一歩手前、まずは「良い参考書」に出会うところから始めてもらいたい。
そんな想いで、このサイトを作りました。
参考書は“辞書”のように使えばいい
もう一つ、このサイトを始めた理由があります。
それは、「参考書を最初から最後まで小説のように読もうとする人が意外と多い」ということ。
確かに、それも悪くはありません。
でも臨床においては、まず“疑問を解決できるかどうか”が大切だと思うんです。
自分の中にある臨床的な問いと結びつかない知識って、なかなか頭に残らない。
臨床力を上げるというのは、結局のところ、「臨床的疑問を一つずつ解決していくこと」。
知識を無理に詰め込もうとすると、キャパオーバーになって、逆に大事な視点を見失ってしまうこともあります。
だから、参考書は“辞書”のように使ってほしい。
必要なときに、必要な部分だけを開いて、臨床での疑問を解決するヒントを見つける。
このサイトでは、その手助けとして、「この本にはこんなことが書いてある」というポイントをできるだけ具体的に紹介していきます。
1人で1冊持つよりも、職場やグループで共有して使う。
そんな形でも十分に価値があると思っています。
読むことは“仮説の引き出し”を増やすこと
結局のところ、参考書を読むという行為は、“仮説の引き出し”を増やすことに過ぎません。
読むだけで答えが見つかるわけではなく、
「臨床で感じた疑問 → 読む → 仮説を立てる → 実践する → また疑問が生まれる」
このサイクルを回すことが大切なんだと思います。
その繰り返しの中で、少しずつ自分の考え方が磨かれ、臨床の幅が広がっていく。
そんな実感を、後輩たちにも味わってほしいし、自分自身もこのサイトを通して、もう一度「学び続ける臨床家」でありたいと思っています。
学びは、いつだって誰かとの対話から始まります。
この小さなサイトが、新しい知識や出会いの“きっかけ”になれたら嬉しいです。

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