リハビリの現場から感じる課題
膝関節痛を訴える患者を評価していると、
「変形性膝関節症だから」
「加齢だから」
という説明だけでは整理できないケースに多く遭遇します。
その中でも見落とされやすいのが、鵞足由来の疼痛です。
実際、鵞足炎や鵞足周囲の過緊張は、若年者のスポーツ障害から高齢者の慢性膝痛まで、年齢を問わず非常に多く見られます。
しかし臨床では、
「なんとなく内側が痛い」で
終わってしまい、縫工筋・薄筋・半腱様筋を正確に触り分けられていないケースも少なくありません。
圧痛評価を正しく行うためには、
「どの組織を触っているのか」
を理解していることが極めて重要です。
そんな触診の基礎を徹底的に学べるのが、『触診ドリル 下肢・体幹編』です。
書籍の基本情報
書籍名:1日3分自触習慣!触診ドリル 下肢・体幹編
著者:浅野昭裕
出版社:運動と医学の出版社
発行年月:2024年1月
判型:B5変
ページ数:約244〜260ページ
ISBN:978-4-904862-62-9
定価:5,280円(税込)
電子版:あり(医書.jpにて配信)
書籍の概要と特徴
本書の特徴は、
「自分で触って覚える」
という実践重視の構成です。
単に筋の名前や起始停止を暗記するのではなく、
- どこをランドマークにするのか
- どの方向へ指を進めるのか
- どの深さに筋が存在するのか
- どうすれば他筋と触り分けられるのか
という“臨床で本当に必要な触診技術”を学べる内容になっています。
特に印象的だったのが、膝関節周囲の触診です。
膝内側痛を訴える患者に対して、鵞足部を適切に評価できるかどうかで、治療戦略は大きく変わります。
例えば、
- 縫工筋優位の緊張なのか
- 薄筋由来の内転ストレスなのか
- 半腱様筋の伸張ストレスなのか
これらを触り分けられるだけで、歩行指導や運動療法の精度は大きく向上します。
本書は、そうした「臨床で差が出る触診技術」を非常に丁寧に整理しています。
目次と各章の内容
序章 触診を学ぶための基本姿勢
触診を行う上で必要な視点や、ランドマークの捉え方について解説されています。
単なる知識ではなく、
「なぜ触れないのか」
「どうすれば触れやすくなるのか」
という触診の考え方を学べる章です。
第1章 骨盤・股関節周囲の触診
ASISやPSIS、大転子などの骨指標から、股関節周囲筋へ触診を広げていく内容です。
下肢全体のアライメント理解にもつながります。
第2章 大腿部の触診
縫工筋、薄筋、ハムストリングスなど、膝関節機能に関わる重要筋を触診できます。
特に鵞足部へつながる筋の走行理解は非常に重要です。
縫工筋はASISから斜走し、薄筋は内転筋群の中でも内側を走行します。
一方で半腱様筋はハムストリングスとして後内側から走行してくるため、それぞれ収縮方向やテンションのかけ方を理解することで触り分けがしやすくなります。
臨床では、
「どこに圧痛があるのか」
を評価する際、この触り分けが極めて重要になります。
例えば鵞足部の圧痛でも、縫工筋優位なのか、薄筋優位なのか、半腱様筋優位なのかで、背景となる運動連鎖や負荷パターンは異なります。
第3章 膝関節周囲の触診
膝蓋骨、内外側関節裂隙、側副靱帯、膝蓋腱など、膝関節評価に欠かせない構造物を学べます。
その中でも鵞足部評価は、膝内側痛の鑑別において重要なテーマです。
特に変形性膝関節症患者では、関節裂隙痛だけでなく鵞足部痛を併発しているケースが多く見られます。
また、若年スポーツ選手では、ランニングやカッティング動作による過使用によって鵞足部の炎症が起こることも少なくありません。
そのため、単純に「膝OAだから」と考えるのではなく、
「どの組織に圧痛があるのか」
を丁寧に確認する必要があります。
本書では、触診位置だけでなく、筋を浮き上がらせる肢位や運動方向も整理されているため、臨床で再現しやすい内容になっています。
第4章 下腿部の触診
前脛骨筋や腓腹筋、ヒラメ筋など、歩行に関与する筋群を中心に解説されています。
膝痛と下腿アライメントの関連を考える上でも役立つ内容です。
第5章 足部の触診
足部アーチや後脛骨筋との関連など、下肢全体の運動連鎖を考える際に重要な知識が整理されています。
第6章 体幹前面の触診
腹筋群を中心に、姿勢制御や骨盤安定性に関わる筋の触診を学べます。
第7章 体幹後面の触診
脊柱起立筋、多裂筋、腰方形筋など、腰部機能に重要な筋群を扱っています。
第8章 臨床応用と触診の活かし方
単なる触診練習ではなく、
「どう臨床評価へつなげるか」
が整理されています。
特に圧痛評価では、“触れる技術”だけでなく、“どの組織を評価しているか”を理解する重要性が強調されています。
読んで得られること
本書を読むことで得られる最大のメリットは、
「触診への解像度が上がること」
だと感じました。
特に膝内側痛に対する評価では、鵞足部を曖昧に触るのではなく、
- 縫工筋
- 薄筋
- 半腱様筋
をそれぞれ区別して評価できるようになることが大きな価値です。
これは単なる技術ではなく、評価精度そのものに直結します。
圧痛部位を正しく把握できることで、
- 負荷の原因分析
- 動作分析
- セルフエクササイズ指導
- 歩行修正
- 筋緊張コントロール
など、その後の介入全体が変わってきます。
どんな人におすすめか
- 膝関節痛を診る機会が多いPT・OT
- 鵞足部の評価が曖昧になっている人
- 圧痛評価に自信を持ちたい人
- 触診を基礎から学び直したい若手セラピスト
- 解剖学を臨床につなげたい学生
特に、
「膝内側が痛いですね」
で終わってしまうことが多い人には非常におすすめです。
実際に読んだ感想・臨床での活かし方
臨床で膝関節痛を評価していると、画像所見だけでは説明できない痛みが多くあります。
そのときに重要なのが、“実際に触れて確認すること”です。
本書を読むことで、鵞足部の触診に対する理解がかなり整理されました。
特に、縫工筋・薄筋・半腱様筋を「なんとなく」ではなく、
「筋走行を理解した上で触り分ける」
という視点が非常に勉強になりました。
圧痛評価を丁寧に行うことで、患者自身も「そこが痛いです」と明確に認識できるため、治療への納得感も高まりやすい印象があります。
また、鵞足部痛は高齢者だけではなく、スポーツ選手や若年者にも多く見られるため、年代を問わず重要な評価技術だと改めて感じました。
まとめ
『触診ドリル 下肢・体幹編』は、単なる解剖学の本ではありません。
「どの組織を触っているのか」
を理解しながら、臨床につながる触診技術を学べる実践書です。
特に膝関節痛においては、鵞足部評価の重要性は非常に高く、縫工筋・薄筋・半腱様筋を触り分けられるかどうかで、評価精度は大きく変わります。
圧痛評価を正しく行うためにも、“触れる力”は欠かせません。
膝内側痛をより深く理解したい理学療法士・作業療法士にとって、本書は非常に実践的な一冊だと感じました。

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